予後の悪い乳ガンにも光
- 製造・販売元
- 日本ロシュ株式会社
- 対象患者
-
- HER2過剰発現が確認された転移性乳ガン
- 心機能・生理機能(肺、肝臓、腎臓など)が保たれている。
- 用法
- 静脈内に点滴注射する(1回の点滴に要する時間は3~4時間)
- 有効率
- 30~40%
- 副作用
-
- 発熱
- 悪寒
- 無力症
- 疼痛など
- コスト
- 150mlで80042円(1回の投与分)初回のみ2倍のコストがかかる。
- 禁忌
- ハーセブンの成分に対して過敏症の既往歴のある患者
ハーセプチンの紹介
ハーセプチンは、日本で最初に発売された乳ガン分子標的薬剤で、2001年6月に認められました。HER2という遺伝子、もしくはその遺伝子からつくられるタンパク質の過剰発現がみられる転移性の乳ガンがハーセプチン投与の対象となります。
日本では現在、転移性乳ガンにしか適応が認められていないので、手術をした後、もしくは手術をする前で、すでにもう転移が分かっている症例しか対象になっていません。しかし、最近アメリカでは、手術前にハーセプチンを使って腫瘍が小さくなったために手術ができた例や、いくつかの薬を併用すると、手術をしなくても助かる例が報告されています。
ハーセプチンは副作用が少ない
ハーセプチンだけを用いた場合には、脱毛や吐き気などの一般の抗がん剤でみられるような副作用がありません。しかし、投与を受ける場合には、心臓の機能や生理機能、骨髄や肺、肝臓、腎臓などが正常に保たれていることが条件になります。
とくに心臓に負担をかけるアドリアシンなどと一緒に投与すると、心臓が極端に悪くなることが知られています。また、発熟や悪寒、発疹など、抗体療法に特有の副作用が認められます。また、まれにショックになったり、肺の炎症をおこしたりする例が報告されています。
ただしそのような例でも、1回目の投与時にでることが多く、2回目以降には副作用が少ないのが一般的です。
ハーセプチンは静脈内に点滴注射しますが、時間がかかります。とくに1回目には、2回目以降の倍の量を投与するので、4~6時間かかります。また、少なくとも数回以上投与しないと有効性が出ないこと、1本あたり8万円と高価なことなどがハーセプチンの短所です。
ハーセプチンの有効率は、30~40% です。HER2遺伝子が異常発現している乳ガンは、乳ガン全体の約25~30% で、ハーセプチンの有効率は30~40% なので、乳がん全体の約10% に有効です。
一般には、効果のある間はハーセプチンを毎週投与します。ハーセプチンの効果がある期間は平均9ヶ月、つまり、9ヶ月寿命が延長することになります。最近、プラトシンという薬と併用すると、ほぼ100% の方に効くとアイルランドで報告されました。手術にかわってこの薬剤を使った治療だけになる時代がくるかもしれません。
投与中の日常生活
皮膚に転移をしている方にハーセプチンを使うと、転移をしている場所が乾いてきたり、腫瘍が小さくなって出血しやすくなります。入浴中にこすったり、暖めすぎると、転移しているところが出血をしやすくなるので、入浴は短時問にしましょう。
食事や運動、車の運転、飲酒、喫煙などに関してはとくに制限はありませんが、若干心臓に負担がかかることを忘れてはいけません。