リスクを徹底的に下げる食べ方の習慣

野菜はしっかりたっぷりと(1日の目安)

「がんを防ぐための12か条」の第l条には「バランスのとれた栄養をとる」、「野菜料理をどんどん食卓に加える」とあります。
さらに、第6粂に「食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる」とあり、世界がん研究基金による「がん予防のための提言(14か条)」では、「1年を通して、1日400~800g、または5皿以上の野菜と果物を食べる」など、がん予防に野菜を積極的に食べることを推奨しています。

野菜のなかには、きのこ・海藻類を含めてもかまいません。ただし、漬け物や佃煮は入れないようにします。果物は両手の親指と人差し指で輪を作ったぐらいの大きさ、たとえばみかん中2個、りんご1/2個ぐらいの量で十分。残りを野菜で補うとちょうどよくなります。野菜は煮る、妙めるなど加熱するとかさが減って量を多くとれるようになります。毎食野菜のメニューを2品程度、中皿1品と小鉢1品分くらいを食べる目安にするとよいでしょう。

好き嫌いのデメリットを軽減する

だれにでも好き嫌いはあります。これは当然です。そこで食品は「見た目の色や形が似ていれば、栄養成分も似ている」という特徴を覚えておくと便利です。
これを応用すると嫌いな食品と同じような栄養成分を含む、別の食品で置きかえることができます。たとえばピーマンが苦手でも同じ線色のアスパラガスに、レバーが嫌いでも同じ赤色の牛肉やまぐろに、といった食品に置きかえることができるのです。ただし野菜は野菜同士、魚・肉類なら魚・肉類同士といった同じグループ内でのみ置きかえが可能です。
同じ赤い色でもハムはトマトのかわりにはなりません。このほか、その食品が属する植物学的分類が同じであると、類似したがん予防効果を得ることが期待できます。たとえばなすが苦手なら、同じナス科のトマトやししとうを食べることで置きかえられます。特定の食品を食べないことで起きる栄養バランスの穴は、似たような食品で穴埋めするようにし、おいしく食べて無理なく栄養のバランスを整えましょう。

回転食で栄養バランスを取る

「回転食」とは、食品やメニューを回転させて、同じ食品やメニューが重ならないようにしながら、栄養のバランスを取るという食べ方のことです。
食品にはさまざまな栄養成分が含まれていますが、どんなに優れた食品でも長所と短所があります。食べる食品数を豊富にすることによって、それぞれの食品がもつ特徴を相互に補完し、相乗効果も期待できる一のです。

たとえばサラダでも定番のレタス、きゆうり、トマトの組み合わせをくり返すのではなく、ブロッコリー、アスパラ、にんじんを加えたり、温野菜のサラダにかえてみましょう。あるいは、サラダばかりではなく、筑前煮などにすれば、れんこんやごぼうなどの根菜、しいたけなど使う野菜の種類がまったく異なってきます。
肉や魚などたんばく質源も同じで、刺身を食べたら次は豚肉、その次は卵、さらに豆腐というように、どんどん使う食品を回転させていくのです。すると自然に調理方法にも変化が出て、料理のバラエティーも豊富になり、発がんのリスクを分散させて栄養のバランスが取りやすくなるのです。米などの主食以外で、メインで食べる食品が3日以上は重ならないようにしましょう。

減塩は必ず強く意識すする

まずは、高塩分食品は口に入れないように習慣づけます。とくに胃がんに大きく悪影響をおよぼしているだけでなく、高血圧など生活習慣病の原因になることがわかっています。
「がんを防ぐための12か条」では1日10g以下、世界がん研究基金による「がん予防のための提言」では1日6g以下が望ましいとされています。世界の長寿食として伝統的な日本の食事が高く評価されている反面、食塩摂取量が多いというデメリットがあります。
とくに豆腐や納豆、刺身などに使うしょうゆ、焼き魚の塩、みそ汁のみそなどに塩分が多く含まれています。個々のメニューにはそれぞれ健康効果があるので、まずは、高塩分食品を過1回程度に控えてみましょう。特に控えたい高塩分食品漬け物、佃煮、干物、練り製品、魚卵加工品(いくらやかずのこ)、ハム・ソーセージ、インスタント食品、スナック菓子、せんべい類など。

おいしく減塩するコツ

普段の生活の中で調味料などを除く日常の食品から食塩換算で1日2~3g前後を摂取しています。ですから、実際に使用する調味料は、多くても7~8 gにとどめなくてはいけません。
食塩は食品のおいしさを引き出す調味料ですが、スパイスなどで辛みを引き出したり、ほかの調味料を使うことで、食塩の使用量が少なくてもおいしいメニューを作ることが可能なのです。

減塩しても満足できる調理のエ夫

  • だし
    だしをしっかり取りましょう。だしのうまみがよく出ていれば、調味料が控えめでも風味が豊かになります。
  • 調味料
    酢の物、ポン酢など酸味を使うと、塩やしょうゆが少なくてもおいしく仕上がります。中華ならラー油や豆板醤、洋食ならカレー粉やこしょう、マスタードなどがおすすめ。
  • 素材の味を楽しむ
    新鮮な旬の素材は味も香りもよいものです。これらをそのまま活かすには、たくさんの調味料を使うのではなく、しょうがやにんにく、青じそなどの香味野菜や、ごまやナッツ類、レモンやすだちなどの柑橘類を添えて、素材本来の味を引き立たせる調理法を選ぶ。
  • 汁やスープを残す
    みそ汁には約2gの食塩が含まれています。みそ汁やめん類の汁は1/3~〜半分以上残すと味はそのままで減塩効果があります。みそ汁は具を3種類以上入れるなど具だくさんにすると汁が少なくても満足感が出ます。
  • 減塩調味料を活用する
    だし割りしょうゆや減塩しょうゆ、みそなどが市販されているので、利用するのもひとつの方法です(ただし、減塩食品は高カリウム食品なので、腎臓障害など制限のある人は主治医と相談の上使用)。

塩分は習慣性が高く、「慣れ」に大きく左右されます。何にでも塩やしょうゆをかける癖があっては、せっかくの減塩料理も台なしになってしまいます。徐々に薄味を心がけ、外食のメニューが「ちょっと塩辛いかな」と感じるぐらいを目指しましょう。

食品の選び方

食品の選び方食品は、基本的に新鮮であることが重要です。野菜類などはこまめに買い物に行き、食べきる量を冷蔵保管するのがいちばん。冷蔵保管中にもビタミン類が失われるので、少量ずつこまめに買い物に行きましょう。
このほか、旬の時期のものや熟したものを選ぶようにしましょう。ハ
ウス栽培などで時期はずれに作った野菜は一般に栄養成分などが少なめです。たとえば、ほうれんそうでは、旬の冬採りなら100g中のビタミンC が60mgなのに対し、夏採りは20mgと少なくなっています。
できるだけ露地栽培の野菜や果物を食べるようにしましょう。頻繁に買い物できない、1度に食べきれないといった場合は自分で冷凍したり、市販の冷凍野菜も利用してみましょう。
冷凍野菜は旬の野菜を凍結しているため、おすすめです。逆に水煮や缶詰は栄養成分が洗出して半減していることが多く、とくに果物の缶詰はビタミン類はほとんどないうえ糖分が多くなっているので、できるだけ生のものを食べるようにしましょう。

よく噛んで食べる

食事をよく噛むことで、脳を刺激したり、食べ過ぎを防ぐといった効果があると同時に唾液の分泌を高めます。また、自律神経を安定させる働きもあります。
唾液には、口の中の雑菌を殺菌する作用のほか、消化酵素など、40種類以上の酵素が含まれています。このなかには発がんを促す活性酸素を分解するカタラーゼ、発がん物質を抑えるペルオキシターゼなどがあり、焼き焦げなどに含まれるヘトロサイクリックアミンなどの発がん物質の作用を効果的に抑えることがわかってきました。また、発がん物質を不活性化するには、30秒以上の咀嚼が必要という報告もあります。
毎日の食卓に、噛むのに時間がかかるかたいもの、弾力のあるものを1品は並べるのがおすすめです。ごぼうやれんこんなどの根菜類は大きめに切ったり、こんにゃくやきのこ、海藻類を積極的に取り入れましょう。歯が弱くなっている人は、斜め切りや薄切りにして噛み切りやすくすれば、噛む回数を増やすことが負担になりにくくなります。食事を抜くと噛む回数が減り唾液の分泌量も少なくなります。1日3食きちんと食べることもがん予防に一貫献しているのです。

料理の焼け焦げに注意

さんまなど季節の魚の焼けた香りは旬の味覚を引き立ててくれます。ところが、魚や肉を高温で焼くと変異原性物質であるヘテロサイクリックアミンという発がん物質が発生することが確認されました。魚や肉の焦げに体への害が紹介されています。
これはたんばく質が焼き焦げることで変性して作られます。そのほか、ステーキやハンバーグなどたんばく質を多く含む肉類でも、高温で加熱調理するほど多くできることが明らかになっています。しかし、焦げた部分を食べると一気にがんの危険性が高まるわけではなく、またそれだけでがんが進行するわけでもありません。毎日焦げた部分を食べたりせず、焦げた部分は残すようにすれば自衛できます。普通の食生活の範囲であれば、多少の焼き焦げは神経質になる必要はないでしょう。

食品添加物について

食品添加物は、保存や発色のために使用され、複数の添加物が混在すると発がん物質質に変化する場合があるといわれています。
しかし、食品添加物が原因となって起こるがんは全体の釣1%という報告があり、ほかの発がんリスクに比べるとはるかに低い数字です。日本で使用されている食品添加物は徹底した安全試験を受けて認可が得られていますが、とり過ぎると発がんを招くのではないかと疑われているものもあります。たとえば発がん物質のニトロソアミンは、ハムやソーセージなど肉加工食品に使われる食品添加物の亜硝酸ナトリウムと肉や魚に含まれるアミンが食品中で合成されてできます。
しかし、ごくわずかな量なので神経質になる必要はありません。
また、肉や魚のアミンと野菜に含まれる硝酸が胃の中で亜硝酸ナトリウムとなり、ニトロソアミンを作ることがあります。しかし、ごくわずかな亜硝酸ナトリウムの影響がどの程度かは明らかでなく、食中毒菌であるボツリヌス菌の繁殖を抑える効果をもっているため、欧米でも広く使用されています。
また、人工甘味料であるサッカリンには動物実験の結果、がんの誘発と促進に影響をおよぼすと推測されている反面、発がんを否定する研究もあります。

人工甘味料は、種類も増えているので、使用する場合も、特定の成分・商品に偏らないほうがリスクを分散できるといえます。また、合成着色料も発がんの疑いが強く、あまりに色が濃い加工食品は避けておくのがよいでしょう。
オレンジやグレープフルーツといった柑橘類の輸入品には、防かび剤が食品添加物として認められています。しかし、動物実験によって肝臓・膀胱がんを促進する作用が確認されています。これは皮に残留しているだけなので、皮を厚くむいて果実や果汁のみを使用するようにしましょう。今後、これまで安心であるとされてきた食品からも発がん物質が見つかるかもしれません。発がんのデメリットと栄養・健康上のメリット、安全性を比較・検討して規制されていくので、食べる側も「わからないことがまだまだある」ことを心にとめておきましょう。

農薬と発がんの関係

消費者として農薬が問題になるのは「農作物に残留している農薬を摂取することによる健康被害」です。よくあるたとえ話に「農家は自分用の野菜には農薬を使わない」というものがあります。たしかに自家消費用に使わない農家もあるようですが、ほとんどの農家はすべてを自給自足をしているわけではないので、野菜や果物をスーパーで買ったりしています。
残留農薬が危険であれば、怖くて一般の店頭で購入できないはずです。農家の人がいう「農薬は危険」は、農薬散布の際に農家の人自身が直接吸い込んでしまう危険であって、消費者にとって危険であるかは別の話です。
また、特別栽培農産物と残留農薬は違う視点にあるもので、特別栽培農産物は普通栽培に比べて散布回数が半分のものを指すだけです。残留農薬という観点からみれば、収穫直前に散布された農薬が一番重要で、普通栽培と特別栽培農産物では残留農薬が検出される割合はあまり変わらないことがわかっています。

山菜はあく抜きをする

山菜のわらびには、ブタキロサイドという発がん物質が含まれ、牛がわらびを食べると中毒を起こすことで古くから知られています。

ワラビを大量に食べた牛が膀胱ガンを発症

しかし、このブタキロサイドは、水にさらしたり加熱する「あく抜き」を行ったり、塩蔵して貯蔵すれば、分解されて発がん性を失うことがわかっています。
食材として出回っているわらびは十分あく抜きをされています。わらびやふきのとうなどの山菜を利用する場合は十分なあく抜きを行って食べるようにしましょう。

たばこは絶対禁煙

最強の発がん物質

発がんは「たばこ」と「食事」が二大要因で、それぞれの影響は30%程度とされています。つまり、熱心に食事に注意を払っていても、たばこを吸っていては予防効果も帳消しになってしまうということです。『国際がんジャーナル』によれば、日本人喫煙者の肺がんリスクは、非喫煙者の4倍以上という結果が出ています。

また、日本人男性の肺がんの約70%はたばこが原因であるといわれています。身近な発がんリスクのなかでこれほど高いリスクを示すものはほとんどなく、非常に深刻な数字だと専門家は指摘しています。
肺がんで死亡するリスクは、1日の喫煙本数が多いほど、喫煙期問が長いほど、喫煙開始年齢が低いほど高くなります。

たばこの煙にはなんと、4000種類以上の発がん物質が含まれています。しかも、がん細胞を作る働きをする物質と、がんの増殖を促す物質の両方が含まれる最悪の発がん物質なのです。
それが体内でたばこの煙が通っていく道筋すべてに発がんを促しています。口から吸い込んで排泄するまで、多くの臓器を通過するため、肺以外の臓器にもさまざまな発がん物質をまき散らしています。

2002年、国際がん研究機問では、喫煙によって、口腔・咽頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がん、腎臓がん・尿管がん、勝胱がん、子宮頸がん、骨髄性白血病の発がんリスクが上がると発表しています。

周囲にも迷惑をかける受動喫煙

健康増進法の施行によって、さまざまな場所で禁煙や分煙が進んできました。しかし、家庭内まではそうもいきません。日本の疫学調査で、非喫煙者である妻の肺がんによる死亡率は、夫の喫煙本数により高まり、1日1箱(20本)以上になると約2倍になるとわかっています。

このような間接的な影響を「受動喫煙」といいます。喫煙者本人が吸い込む煙に比べ、受動喫煙の煙を吸うほうが何倍も毒性が強いともいわれています。同居する家族、とくに乳幼児や未成年の子ども、高齢者は影響を受けやすく、受動喫煙によって発がんのリスクが高くなります。
また、家族や周囲の大人が喫煙していると未成年者の喫煙への誘惑は強くなりがちです。大人が率先して禁煙し、子どもたちに新しく吸わないように教育し、家族の健康を守りましょう。

禁煙すればリスクは下がる

禁煙した場合、禁煙年数が長いほどリスクが下がっていきます。まったく吸わない人と比べて1~9年で3倍、10~19年では1.8倍、20年以上で1.0倍で、ほぼ同じになります。

肺がんのリスクは60歳を超えると高くなることがわかっています。ですから、とくに現在40歳前後の人にはぜひ禁煙をおすすめします。
また、禁煙を開始するのに遅過ぎることはありません。前述のように、禁煙した日から時間の経過とともに肺がんのリスクは下がっていくのです。このほか、生活習慣病をあわせもっている人は心筋梗塞のリスクが急激に下がります。禁煙の手助けとして禁煙外来を設置している病院も増えてきました。今日からでも禁煙にチャレンジしてみましょう。
禁煙のためには、まず成功率が高いという禁煙補助剤を使う方法がいいでしょう。
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飲酒の過剰摂取はガンのリスクを高める

アルコールは発がん物賞と同じ扱い

お酒には食欲を増進したり、気もちを明るくし、リラックスさせる効果をもっています。一方、「体に毒」という面ももっています。
とくにアルコール濃度の高いお酒を飲む習慣がある地域では、食道がんが多いといわれます。強い酒で口腔や咽頭、食道などの粘膜の細胞を傷つけるのが原因だろうと考えられます。

アルコールの害、といえば肝臓病を連想する人も多いでしょう。しかし、世界がん研究の報告書によると、飲酒によって「確実にリスクを上げる」のは口腔、食道、肝臓がん、「おそらく確実」として喉頭、大腸、乳がんを挙げています。
長期にわたって大量に飲み続けたり、強いお酒を好んで飲み続けると、粘膜や消化器官が痛みやすくがん化を招いてしまいます。世界保健機関(WHO) や米国の環境保護庁がそれぞれ刊行している発がん物質に関する報告書でも、アルコール飲料はアスベスト(石綿)などの発がん物質と同等のレベルである、という評価を受けているのです。

日本人での疫学研究では、お酒の寿命に対する影響を調べると(飲酒量と死因別の死亡率)、男性ではもっとも死亡率が低かったグループは「時々飲む」あるいは「1週間に150g以下」のグループでした。これらは酒の種類に関係なく純アルコール量で調査されており、種類別に換算してみると、ビールなら大びん1本、日本酒なら1合、ワインなら2杯程度です。ただし、世界がん研究基金による「がん予防のための提言」では、この半分ぐらいの量です。
もちろん、がん予防の観点からは、飲む量が増えるほどがん死亡率が高くなりますので、飲まないのがベストです。

酒とたばこは最悪の組み合わせ

飲酒と喫煙の相互作用をみると、喫煙男性では飲酒量が増すほどがん死亡リスクが増加しますが、非喫煙着では上昇はみられません。
アルコールには、さまざまな物質を溶かしやすい性質があります。たばこに含まれる発がん物質の吸収を促して、全身に運ぶ役割を果たしてしまうのです。飲酒中は極力喫煙しないようにしましょう。こちらにはたばこの詳しい害があります。