メソトレキセート(一般名:メトトレキサート)

免疫抑制剤としてだけでなく抗ガン剤も古くから認められている

製造・販売元
武田薬品工業株式会社
対象患者
  • 急性白血病
  • 慢性リンパ性白血病
  • 慢性骨髄性白血病
  • 絨毛性疾患(絨毛ガン、破壊胞状奇胎、胞状奇胎)
  • CMF療法:乳ガン
  • メトトレキセート・ロイコボリン救助療法(肉腫(骨肉腫、軟部肉腫など)
  • 急性白血病の中枢神経系および睾丸への浸潤に対する寛解、悪性リンパ腫の中枢神経への浸潤に対する寛解
  • メトトレキセート・フルオロウラシル交代療法
  • 胃ガンに対するフルオラシル抗腫効果の増強
用法
静脈内、髄腔内または筋肉に注射する。また必要に応じて動脈内または腫瘍に注射。
有効率
単剤でおよそ20%
副作用
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 脱毛
  • 白血球減少
  • 貧血
  • ALT(GPT)上昇
  • AST(GOT)上昇
コスト
1,066円
禁忌
  • メソトレキセートの成分に対し重篤な過敏症の既往歴がある
  • 肝障害
  • 腎障害
  • l胸水・腹水

メソトレキセートの紹介

メソトレキセートは最も古い抗ガン剤の1つで、急性白血病やリンパ性白血病などに使われる薬の1つです。

また、絨毛ガンといって、妊娠にともう「胞状奇胎」という腫瘍にともなって肺転移がおこりますが、そのような状態に使われている薬の1つです。また最近ではあまり使われなくなりましたが、乳ガンで「CMF療法」という弱い化学療法を行う場合の代表的な薬の1つでもあります。さらに、骨肉腫や軟部肉腫、ほかの肉腫などで現在も最も使われている薬の1つです。
胃ガンでは、メソトレキセートと5-FUをいっしょに使う場合があります。

短時間で点滴が可能

メソトレキセートは葉酸代謝、つまそりビタミンB6に関する核酸合成の阻害をするという機序が非常にきちんと解明されていますので、昔からずっと使われています。点滴が非常に短時問でできるという利点があります。
リンパ性疾患や絨毛性のガンなどには、標準的な治療の1つとして今後も使われていくと思います。

メソトレキセートを投与して、効果が強く出過ぎた場合や、口内炎が強く出た場合などには、メソトレキセートの効果を弱めるロイコポリンという薬を投与することがあります。これは「ロイコポリン救援療法」とよばれるものです。

吐き気や嘔吐、食欲不振や脱毛がおきますが、人によって個人差が非常にあります。肝障害や腎障害があると、メソトレキセートが肝臓で分解されにくくなったり、腎臓から排泄されにくくなったりします。そのため薬の効果が強く出る場合がありますから気をつけましょう。

投与中の日常生活

メソトレキセートを投与中は一般に、口内炎や下痢、粘膜障害がおきやすくなります。口腔内や肛門周囲などを清潔に保つように気をつけましょう。

食事については、刺激性の高いものや、口にしみたりする酸味の強いものはひかえましょう。下痢をしている場合、飲酒はひかえたほうがよいと思います。まれに肺の障害が出ることがありますので、喫煙量は減らしましょう。車の運転にはとくに気をつける必要はありません。粘膜障害や皮膚障害がある場合には、日光を浴びるのはひかえたほうがよいと思います。

ペラゾリン(一般名:ソブゾキサン)

リンパ腫の経口投与の代表

ベラゾリンは、悪性リンパ腫と成人T細胞性白血病、T細胞性リンパ腫の患者さんに用いられています。

製造・販売元
全薬工業株式会社
対象患者
  • 悪性リンパ腫
  • 成人T細胞白血病
  • T細胞リンパ腫
用法
細粒を服用
有効率
28.3%(悪性リンパ腫)、43.5%(成人T細胞性白血病)
副作用
  • 食欲不振
  • 悪心・嘔吐
  • 下痢
  • 口内炎
  • 脱毛
  • 白血球減少
  • 赤血球減少
  • 血小板減少など
コスト
736円
禁忌
  • 重篤な骨髄抑制がある
  • ペラゾリンに対する重篤な過敏症がある

ペラゾリンの紹介

ベラゾリンは、悪性リンパ腫と成人T細胞性白血病、T細胞性リンパ腫の患者さんに用いられています。

減量、増量を柔軟に行える

一般には400mgの細粒からできています。400mgからはじめて、およそ1200mgまで段階をおって徐々に増量したり、逆に副作用が強い場合には減量したりといったことが自由にできるという利点のある薬です。

ただしペラゾリンだけでは約30%くらいの有効率しかありません。ペラゾリンだけでは非常に効果が弱く、治癒をめざす薬ではありません。強い治療をしたあとで再発したた患者さんや、老齢のために強い治療ができない患者さん、もしくは入院治療を希望せずに、どうしても外来で治療しなければならないという患者さんに対して、好んで使われる場合があります。

日本では一般に、ペラゾリンとラステットという薬が、そのような患者さんによく使われています。両方の薬がどちらも効かなくなるということはなく、どちらかを先に投与して、その薬が効かなくなったら別のほうを投与するというように、一般的には使用します。

別の薬との併用は副作用がおこることがある

帯状疱疹の薬で、ゾビラツクスという薬があります。その薬といっしょにペラゾリンが投与されて重篤な骨髄抑制をおこし、亡くなった患者さんがいました。そのように別の薬が入っていると重篤な副作用が出る場合がありますので、併用している薬が何かと必ず問いたうえで投与するということが必要になっています。

ほかの抗ガン剤でも同じなのですが、ペラゾリンでは実際に亡くなった例がありましたので、とくに気をつけて投与することになっています。

一般に抗ウィルス薬がいっしょに人っていると核酸の合成障害がおきて、悪心や嘔吐が強いだけでなく、下痢や口内炎、脱毛も非常に強くおき、なおかつ白血球減少が非常に長い間つづきますので、気をつけて使用することが必要です。
ほかの薬と併用することは基本的に認められていませんが、これまでにラステットやスタラシドなどといった抗がん剤と併用すると、下痢が強く出たり、消化管出血がおきたという報告がありますので注意が必要です。

投与中の日常生活

投与した最初のころに、食欲不振や悪心、嘔吐が出る場合があります。少量ではじめる場合はとくに心配することはありません。最初のころは少量かせいとらはじめるか、投与する場合に制吐剤(吐き気どめ)をいっしょに投与するように気をつけることが必要です。入浴や車の運転、飲酒、喫煙、日光などについては、とくに気をつける必要はありません。