月別アーカイブ: 2017年7月

グリベック(一般名:メシル酸イマチニブ)

薬剤前のセミタイトル

製造・販売元
ノバルティス・ファーマ株式会社
対象患者
慢性骨髄性白血病
用法
食後にカプセルを服用する。
有効率
ほぼ100%
副作用
  • 便秘
  • 吐き気
  • 好中球減少
  • 血小板減少
  • 発疹
  • 白血球減少
  • 貧血
  • 嘔吐
  • 眼瞼浮腫
  • 筋痙攣
  • リンパ球減少
  • ヘモグロビン減少
  • LDH上昇
  • 総たんぱく低下
  • 血清リン低下
  • 血糖値上昇
コスト
1カプセル1700円を1日4回服用
禁忌
  • グリペックに対して重篤な過敏症の既往歴のある場合
  • 妊婦または妊娠している可能性のある婦人

グリベックの紹介

グリペックは現在、慢性骨髄性白血病に対する使用で保険が通っています。アメリカでは、消化管間葉性支持細胞腫(GIST)というめずらしい病気でも保険が認められました。日本ではGISTへの適応拡大のための臨床試験も実施済み。

有効率が非常に高いのが特徴

グリペックは、研究室での実験によって効果がわかったものが、そのまま患者さんの治療に応用され、効果のあることが証明された薬の1つです。グリペックは、ガン細胞にエネルギーが結合するのをさまたげて、ガン細胞をたおします。

有効率は非常に高く、ほぼ100% です。ただし慢性骨髄性白血病の中の急性転化(急性白血病に近い状態になる)の場合には有効率が低くなります。とくにリンパ性の場合には、有効率が50%以下となります。

主な副作用は、便秘と吐き気です。また、日本人では、アメリカ人やヨーロッパ人よりも服用する量が少なくても効く傾向がありますが、好中球減少や血小板減少といった副作用が多くみられるようです。

グリペックは、飲み薬です。朝1回、食後にただカプセルを飲むだけなので、注射をしたり入院したりする必要がないという利点があります。

グリペックは非常に注目されているとともに、患者さんからの要望も強い薬です。現在では移植を勧めたり、インターフェロンを勧めても、「まずグリペックを使いたい」という患者さんが圧倒的に多くなっています。

現在アメリカで、グリペックとインターフエロンとの併用、またキロサイドとの併用の試験が行われています。日本ではまだ行われていませんが、今後いくつかの併用療法の試験が行われる予定になっています。

グリペックは現在、慢性骨髄性白血病と消化管のガンの2種類に対してしか使われていません。急性リンパ性自血痛に対する臨床試験がこの敷か月以内に完了予定です。非常に予後の悪い脳腫瘍や肉腫にも効くということも分かってきました。今後もっと広い疾患で利用が期待されています。

投与中の日常生活

好中球減少がみられた場合には入浴をひかえ、シャワーだけにしましょう。グリペック投与時にみられる最も多い副作用は便秘です。したがって、食事はひかえめにしましょう。

日光、車の運転、飲酒、喫煙に関する制限はとくにありません。ただし、グリペックは開発されて間もないので、飲酒・喫煙によって体内への吸収の効率に影響があるかどうかがわかっていません。そのため、飲酒・喫煙はひかえたほうがよいでしょう。運動に関する制限はありません。ただし、副作用で貧血がおきることがあります。その場合、立ちくらみや運動によって動悸がでることがあるので、運動をひかえましょう。

ベサノイド(一般名:トレチノイン)

急性前骨髄球性白血病の特効薬

製造・販売元
エフホフマンラロシュ
対象患者
急性前骨髄球性白血病
用法
食後にカプセルを服用する。
有効率
68.4%
副作用
  • トリグライセド上昇
  • AST(GOT)・ALT(GPT)上昇
  • 口唇乾燥
  • 頭痛
  • 発熱
  • レチノイン酸症候群の随伴症状など
コスト
1日6000~7000円
禁忌
  • 妊婦または妊娠しの可能性のある婦人
  • ベサノイドの成分に対して過敏症の既往のある患者
  • 肝障害のある患者
  • 腎障害のある患者
  • ビタミンA製剤を投与中の患者
  • ビタミンA過剰症の患者

ベサノイドの紹介

ベサノイドは、急性前骨髄球性白血病という病気にしか日本では保険の適応が認められていません。アメリカでは、皮膚のT細胞性リンパ腫や乳ガン術後、ガンの予防、再発予防に使われることが多いです。

有効率は80~90%

ベサノイドは、単剤で非常に有効性の高い薬です。急性前骨髄球性白血病は、ベサノイドが出てからほとんどの方が助かるようになりました。最近ではこのベサノイドに、キロサイド、ダウノマイシン、もしくはエノシタビンとイダマイシンを併用すると、さらに有効率が高くなり、80% から90%以上の症例で有効であることが分かっています。

ベサノイドが効かない場合には、1998年におきた「和歌山カ一事件」で有名になったヒ素が有効であることが知られています。ベサノイドの投与中に、レチノイン酸症候群という病気が副作用として出ることがあります。
白血球が増えて、白血病が良くなろうとします。しかし、効きすぎると白血球が増えすぎて肺につまって息苦しくなったり、肺のレントゲン写真に異常な影が出たり、頭痛がしたりします。これがレチノイン酸症候群です。

レチノイン酸症候群の場合には、早くにステロイドホルモンを投与したり、抗ガン剤を併用して白血球を減らしたり、状態の悪い場合には人工呼吸をしなければならないこともあります。とくに小児では、強くこの異常が出ることがあるので、小児では投与することを要注意としなければなりません。

ベサノイドは妊婦や妊娠している可能性のある婦人にも使われ、これまでに奇形をおこした例が数例報告されています。そのため、原則的には、妊娠中の婦人には投与が禁止されています。しかし、白血病から命を救うためにどうしても投与しなければならない場合には使われています。ちなみに2人以上の血液専門医がいる病院でないと、ベサノイドが処方できません。

投与中の日常生活

急性前骨髄球性白血病は出血しやすいので、ほとんどの場合で入院することになります。皮膚をこすったり、洗ったりすると出血する可能性があるので、外来で投与する場合にも、入浴や清拭をすすめることはありません。
シャワーやうがいをしたり、ウォシュレットで肛門を洗うだけにしましょう。

ベサノイドでは白血球が非常に減少している場合が多いので、生野菜などの細菌がついている可能性があるものや、納豆・ヨーグルトといった生菌の含まれているものは避け、火の通ったやわらかいものを食べるようにしましょう。

この薬の投与中は、日光による皮膚障害が非常に強くでるので、日光に当たることはできません。この薬の投与中にまれに意識障害や錯乱をきたすことがあるので、串の運転や仕事はしないほうが無難です。薬の吸収が悪くなる可能性があるので、喫煙・飲酒もさけます。