検査による医療被ばくにも注意
職場の健診や人間ドックで行われている検査に、胃バリウム検査があります。この検査は胃がんや食道がんの早期発見を目的に広く行われていますが、内視鏡治療が行えるぐらいの早期がんを、この胃バリウム検査で見つけられることばほとんどないといっていいでしょう。
ごく早期の胃がんや食道がんは、粘膜の凹凸を伴うことは少なく、粘膜の微細な色彩変化として現れているケースが大半です。
それに対して胃バリウム検査は、大量の放射線を照射することで胃や食道の粘膜の凹凸を「影絵」の原理で見るものです。
そのため凹凸のない早期の胃がんや食道がんを発見することは、原理的に難しいのが現実です。特に食道は口からストレートに胃につながる臓器で、バリウムが留まることなく一瞬で胃内に落ちてしまうため、バリウム検査で早期の食道がんをとらえることは非常に困難であるといえます。
結果として胃バリウム検査で発見された胃がん、食道がんは、すでに進行した状態になっていることが多く、かなりの確率で外科的手術や抗がん剤での治療になってしまいます。
内視鏡で治療できるようなごく早期のがんは、ほとんど見つけられません。さらに胃バリウム検査は、多量の放射線を照射して臓器を撮影するため、「被ばく」という問題が生じます。放射能は体に蓄積されやすく、遺伝子の本体であるDNAを傷つけて、がんを発生させます。つまり医療被ばくによる「発がん」のリスクがあるということです。
イギリスのオックスフォード大学のグループでは、日本人で75歳までにがんを発症する人のうち、3.2% は放射線診断による被ばくによってがんが誘発されると推計しています。この数値は調査した15か国のうち、一番高いものでした。
これは、被ばく線量のかなり多い胃バリウム検査が広く行われていることも、大きく関係していると推察されます。
胃バリウム検査は、検診センターなどで撮影する直接撮影(大きなフィルムで撮影する方法)では1回の撮影で15〜25 msyの被ばく量ですが、検診車などで撮影する間接撮影(小さなフィルムで撮影する方法) では20〜30msyもの被ばく量になります。
胸部X線写真(胸部レントゲン撮影)の1回の被ばく量が0.1msyですから、胃バリウム検査では、胸部X線写真の150~300倍もの被ばくを受けることになります。特に検診車での検査は、「職場に検診車が来てくれて助かる」と思っていた人も多いかもしれませんが、被ばく量が特に多いことはあまり知られていません。
放射線によってDNAが傷ついて発がんする被ばく量は、50~200msyといわれていますので、1回の胃バリウム検査で発がんすることはありませんが、毎年胃バリウム検査を受けているとDNAが次第に傷つき、がんが発生してしまう可能性は否定できない事実です。
また、バリウムを飲むこと自体も苦痛を伴います。バリウムとともに服用する胃を膨らませる目的の発泡剤では、ゲップを我慢しなくてはならず、なにより腹部の不快な膨張感に耐えなければなりません。検査のあとはバリウムを排出するために下剤を飲みますが、それでもバリウムを出せずに苦しむ人も多くいます。
健康維持のためと称して、苦しいうえに精度の低い胃バリウム検査を受け、放射線被ばくが原因でがんになってしまったのでは、なんのための検査かわかりません。
医療関係者、特にドクターで胃バリウム検査を受けている人は今の時代ほとんどいないのではないかと思われます。胃バリウム検査を積極的に受けているのは、よっぽど不勉強な医師か、バリウムの味が好きで、台の上でクルクル回るのが好きな医師ぐらいでしょうか。
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